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先日腐れ縁の友人Wと私の嫁の三人で飲みに行ってきた。 彼はその日も仕事であり、当初私たちの地元の方へ来る予定だったのが、 彼の地元の方へ来てくれないかと連絡がある。 その旨嫁に伝えてみると、見るからに渋い顔をした。 彼はため息をひとつついたが、これはこれ。仕方のないことだ。 というわけで、間を取って渋谷にて食事をすることとなったのである。 腐れ縁の友人とはいえ、実際に会うのは久々であった。 最後に会ったのが、年末のことであったから、実に二ヶ月ぶりということになる。 久しく見る友人のその姿は疲れ果て、髪はやたら伸びており、彼の忙しさを窺わせた。 わざわざ遠方より車にてやってきたのである。 ここは一つ美味そうなものを食いに行こうではないか。 割り勘だけど。 そんなわけで渋谷の街をぶらつくことしばらく。 私たちは前に何度か足を運んだことのある、餃子の店にて飲むこととした。 店に入ったのが丁度七時位であり、週末日ではあったものの 何とか店に腰を下ろすことが出来た。 その後しばらくして店入り口に行列が出来始めていたのだから、 まったくタイミングがよかったのだろう。 通されたその席は、窓に面したそれであり、外の景色を窺うことが出来るものの、 見える景色はビルの屋上程度でたいした景観ではない。 しかし景色を楽しみにきたわけではないので、それはたいした問題ではないのだけれど。 軽く近況、雑談を楽しみ、その後カラオケ屋へと足を伸ばす。 Wはやたら高音が出る男であり、楽器をやっていることもあってか歌は上手い。 しかし歌う歌によってまるでテンションが変わり、やる気のない歌は見事にやる気がなく、 まさに下手に聞こえるのに対して、妙なテンションで望んだ歌はやたらと上手く歌いきる。 彼は山崎まさよしを好んでおり、歌わせると「え、モノマネ大賞いけんじゃね?」と 錯覚してしまうほどよく似ている。 私も歌うのは好きである。どうせなら上手く歌いたいなと思っている。 高音で一気に歌いきったときは実に心地がいい。 しかしこいつは私の必死の高音が、余裕の通常音のそれらしく、非常に腹立たしい。 別に腹筋割れてないのに。 カラオケ屋を出たとき、時刻はすでに二十三時を指していた。 従来であれば終電を気にしてここでさようなら、というわけだが、 彼の移動手段は車である。帰りは送ってもらえるという。 そういえばこいつ、やたらと酒を飲んでいた気もするけど、それは見なかったことにしよう。 ともあれもう一件くらいどこかに遊びに行こうではないか。 彼のアルコールの分解も進むかもしれないし。 彼は最近ダーツにはまっているという。最近というかここしばらく、いや。 かなり前からはまっているらしいが、まあそれはそれ。 昔ちょくちょく遊びに行っていた、某ダーツバーへと向かう。 店内は週末ということもあってたくさんの人でごった返していた。 ダーツマシーンとでもいうのか。台はすべて埋まっており、 私たちが投げられそうな余裕はない。 果てさてどうしようと思いつつ、人々の投げている様子を見ていたのだが。 何だあの命中率。ゴルゴか? 放たれた矢は、見事三本すべてが真ん中の命中している。 得点は百五十点。それがやたら連続して出ている。 何だこれは。どこかのサーカスか。ロシアの回し者か。 おかげですっかり魅入ってしまった。あまりに長い間魅入ってしまっていると、 店員が気を利かせて「台あけましょうか?」と聞いてきたくらいだ。 あそこまで綺麗に的を射まくれば、それはとても面白いことだろう。 しばらくして、ようやく私たちもゲームを始めることとなった。 零時を回って人がすっかり少なくなってしまったためだ。 マイダーツを鞄から出しながら、Wは唐突にこんなことを言いった。 「賭けやらね?」 賭けってあんたどういう事か。 どう考えても貴様が私たちの方が下手である。ほとんどプレイしていないし、 マイダーツなんてものもない。嫁に関しては、的を狙うか以前にあたるかどうか、むしろ 届くかどうかすら怪しいというのに。まったく賭けとして成立しない状況である。 しかし執拗に賭けをやろうと提案してくるWに、仕方なく私は一つの妥協案を示した。 私「貴様が負けたら私と彼女にナシゴレンをおごり、貴様は食っちゃダメ」 W「うん」 私「貴様が買った場合、私たちがナシゴレンをおごり、全員で食う」 W「え?」 最大の譲歩である。もっとも合理的な妥協案である。 彼は賭けのスリルを楽しむことが出来、私たちへのリスクも少ない。 普通にゲームをしたのであれば、彼の一人勝ちは目に見えていることである。 まったく賭けになっていなかったところを、何とか修正したのがこの提案だったのだが。 ひたすらゴネ始める友人W。 W「ちょっと、おかしくないですかね」 おかしくない。極めて正論だ。平等な理念の上に成り立っている。 あまりにうるさいので、別の友人へと電話。その正当性を確認した。 ようやく納得したのか、このルールで了承する友人W。 とっとと認めればいいのに。 真ん中の方の台は上手い人が占拠している事であったし、私たちは端っこの台をチョイス。 W「勝てばいいんだよな、勝てば」 その通りだ。極めて貴様に対して有利な条件なのに、何をぐだぐだ言っているのか。 そして結局Wは勝ち、見事ナシゴレンを食うことが出来たのだが。 W「納得が行かねー」 あーあー。聞こえなーい。
by unnyo8739
| 2007-02-13 15:28
| 日誌叙情駄文
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Comments(1)
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