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ツンデレラ その9 それはあまりにも唐突で、あまりにも悲惨な出来事でした。 誰もそれを止めることは出来ず、そして目を離す事も出来ません。 ただそこにて繰り広げられる一部始終を、 言葉を発する事もなく、唯じっと見ていることしか出来ませんでした。 遠くで鐘の音が聴こえてきました。 「ちくしょう、離れろ! 離れろよ!」 魔法使いは叫びました。だけどもその声はかすれていて、 はっきりとした言葉にはなってしません。 だけども魔法使いは叫びました。 必死に姉をツンデレラから引き離そうとするのだけれども、 彼にはそれだけの力も残されていません。 ただ空を泳ぐように、力なく手を伸ばすのみでした。 「私のガラスの靴を、よくも……」 ツンデレラの姉は、既に瞳は閉じられ動かなくなってしまっているツンデレラへと、 さらにガラスの靴の破片を押し込みます。ツンデレラの口より、また赤いモノがこぼれました。 ぽたぽたと散る赤いモノは、ツンデレラだけのものではありませんでした。 姉の手のひらも破片によって傷だらけとなり、赤い雫をしたらせています。 その傷は深く大きく、本来ならもうそれ以上力を込めることなど出来ないでしょう。 しかし彼女はひたすらに力を込めてツンデレラを貫こうとしていました。 「やめろ! やめろよ!」 涙を流しながら、鼻水をたらしながら魔法使いは叫びました。 ツンデレラの体温がどんどん失われていくのが、その手を通じてわかったからです。
by unnyo8739
| 2006-04-21 12:31
| 僕俺私小話
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