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そんなわけで、二週間もたってしまったが、検査の話の続きである。 正直これだけ時間が空いてしまうと、自分が何を言いたかったのか、 半分以上忘れているわけだが。 鉄は熱いうちに打てとはよく言ったものだ。 勢いは勢いがあるうちが華。諸事情込みとはいえ、 一度走り出したら、そこで止めてはならないのだと気がつく。 いや、知ってたけれど再確認というほうが正しいか。 さておき。 馬鹿みたいに糞甘い謎の液体を飲み干し、トイレに幾度となく駆け込んだ私。 昨夜からまったく水分を取っていなかったため、こんな物体でも地獄に仏。 腰が引くほどまずかったが、それでもしっかりと飲み干していったのだが。 ともに検査に来ていたおっさんが、私の後ろで言う。 「こんなもん、飲めたもんじゃあないですよねえ」 看護士が苦笑して答える。 「一応レモン味なんですがねえ」 思わずそれを注ぐ手が止まる。 忘れていた甘さが、一気に襲い掛かってきたような気がした。 私の胃腸は弱い。薬を飲んで、数分で六回も七回もトイレに駆け込んだわけだが。 見れば他のおっさんたちは、さほどトイレに駆け込んでいる様子がない。 というよりも、私の知る限り、彼らがトイレに行った記憶がないのだ。 もしかして私の分だけが、恐ろしく効き目の濃い薬を盛られたのかと不安になる。 しかし、そんなつまらない不安など、次に行うべき検査の不安に比べれば、 さほど大した事ではなかったのだ。 「というわけで、大腸の検査を行います」 そうなのだ。 すっかり忘れていたが、この糞甘い薬を飲まされた理由はそれだったのだ。 「ではこれに着替えてください」 渡されたのは、紙製のパンツだった。 「こちらの方向が後ろになりますので」 見れば後ろになる部分に大穴が開いている。 下半身全露出の負担を少しでも軽くしようという、病院側の配慮か。 それとも、何かしら他に理由があるのか。 正直な話、それを履く私の顔は、非常に微妙な表情であったと思う。 「unnnyoさん、どうぞ」 いよいよ私の名が呼ばれる。 嗚呼、欝だ。憂鬱だ。ここまで来て後悔を覚える。 こんな検査頼むんじゃなかった、と。 だが、明日の健康のためには、これもまた仕方のないことなのだ。 そして何より、自らが望んでそれに応じたわけなのだ。 私は私の為に、私の責任を果たさなければならないのだ。 いよいよ覚悟を決める。 けれども、説明をする医師の言葉は半分と耳に入らなかった。 「じゃあ、ゼリーをつけますんで少しひやっとしますよー」 カメラが入りやすいようにする為のそれの事だろう。 いよいよか、南無さn 医師はその言葉と同時にゼリーを肛門内部まで塗りこんだ。 出すべきところであり、入れるべきところではないそこに、唐突にねじ込まれたのだ。 覚悟する間もなかった。一瞬の出来事だった。 あまりに突然すぎて、出す声すら出なかった。 間髪いれずカメラを挿入していく医師。 野郎、これは不意打ちじゃあないのか。正々堂々と勝負しやがれ。 憎憎しげに医師を見上げた。 が、医師の目はカメラの操作と内部の様子に気をやっており、 私の視線はまったく届かなかった。 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。 腹の中にて、何かしらの異物が這い回る感覚。 エイリアンとかを腹の中に飼っていた人も、こんな感覚だったのだろうか。 「綺麗な腸ですねー」 医師がそんな事を言っていたような気がしたが、あまりの気持ち悪さに、 「そんなことより早く終了してくれ」としか思えなかった。 私は基本的に、痛みに対して非常に弱いのである。 タンスの角に小指をぶつけたら、悶絶して数分は動けないし、 指先に発生するささくれとの格闘に、また数分を要すこともある。 脛をぶつけたら、しばらく立ち上がることはできない。 それくらい痛みに弱いのだ。 故に。 唐突に起こる臓腑に何かが当たる感覚。伴う不安。 腹が痛い、腹が痛い、腹が痛い。 思わず声を上げた。 「先生、何か当たって痛いんですけど!」 泣きそうな声かどうかは知らない。とにかく訴えて出た。 半分聞き流していた説明が、なぜか鮮明に蘇ったからだ。 「腸の壁は非常に薄く、デリケートですので、 何かしら痛みを感じたら、すぐに言ってくださいね」 おお! マイジーザス。何てこった。今がそれだよ、痛いんだよ。 何とかしてくれよ、おっかさん。 「うーん、ちょっと待ってくださいねー、もうすぐですからー」 おおおい! あれか、歯医者で「痛かったら言ってね」って言われて、 「痛い」と訴えでたら「我慢して」って言われるあれか。 不安が爆走する。人間の感覚はとても鋭敏だ。 物理的なダメージよりも、不安によるダメージは、計り知れない痛みをもたらす。 私の精神は、軽くパニックを引き起こしていた。 続く。
by unnyo8739
| 2006-03-28 14:54
| 日誌叙情駄文
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Comments(2)
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mrbig20000 at 2006-03-29 00:58
OH!!アナルバージンを大腸検査で失ったんだね......ちなみに俺もだが.....(笑)
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unnyo8739 at 2006-03-29 15:50
下品。
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