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あるところに3人の男がいた。 彼らは幼馴染であり、とても仲がよかった。 Aは真面目な男であり、成績もよくエリートとの評判を受けていた。 プライドが高い性格であり、それ故に鼻につくところもあった。 Bは豪快な男であり、成績は並であったが、 明るく朗らかな性格から、人当たりも面倒見もよく行動力もあった。 Cは俗に言うオタクなタイプであり、成績もあまり良いとは言えなかったし どこか暗い感じのする男であったが、独特のセンスがあった。 まったく違う性格であったが、皆それぞれを尊敬しあっていた。 小、中と同じ学校に進んだものの、高校からはそれぞれ別の学校に通うようになり、 なかなか顔をあわせることが出来なくなってしまった。 それより10年ほどたったある日のこと。 久しぶりに皆の予定があい、3人で食事をすることとなった。 挨拶を交わし、再会を祝って乾杯をした。 しばらく昔話に花を咲かせていたが、そのうち現在自分たちが どんな仕事をしているかという話になった。 Aが自慢げに話す。 「僕は今D社に就職して頑張っているよ、海外出張も多くて大変だけど」 D社といえば誰もが知っている有名な大企業である。 「今大きなプロジェクトを任されていて、がんばりがいもあるよ」 「なんだって、すごいじゃないか」 「さすがAだね」 素直に感心するBとC。 「そんな大きな会社だと、さぞ気苦労も多いだろうね」 Cが言う。 「ああ、その通りだよ。周りが全員ライバルだからね」 答えるA。 「収入も普通の人よりはあるだろうとはいえ、なかなかうまくいかないよ。 ローンや税金やらで大変さ」 続いてBが話し始めた。 「俺は勤めていた会社から独立して、今はバーをやっているよ」 「ほほう、それはなかなか大変なんじゃないのかい?」 Aが問う。 「いやいや、おかげさまで繁盛しているよ、有名人達も結構訪れるし、 あの××っていう女優もこの前来てくれたよ」 「へえ、そんなに繁盛しているのなら今度是非行ってみようかな、 なんて名前の店なんだい?」 今度はCがBに問う。 「△△って言う店なんだけどね」 「なんだって、あの有名店が君の店なのかい?」 △△といえば、店の雰囲気は勿論のこと、 店長の人柄も良いことで人気のある店である。 有名人もよく訪れるとも聞く。 「まさか君がそこの店長だったとは驚きだ」 AもCも心底彼の成功を喜んだ。 「でもなかなか大変だよ、色々と気を使う部分はてんこ盛りさ。 借金もまだまだあるしね、裏では日々ひいひい言っているよ」 最後はCである。 「実は僕は今働いていないんだ」 その発言にAもBも思わず黙り込んでしまった。 「一度就職したのだけど、どうしても人間関係がうまくいかなくて、 結局そこを辞めてしまったんだ」 うつむいたまま黙り込んでしまうA。 「元気出せよ」とB。 「いやいや、その後株に手を出してみたんだけど、 それが大当たりさ、今は自室からPCで株だの不動産だのを 動かすだけで収入があるんだ、働かなくても全然平気だから 本とかを書いたりしてのんびり暮らしているよ」 私は彼らの話を彼らの真後ろで聞いていた。 そしてCはもう人生に満足を覚えていると思った。 その後彼がその生活を保障できるかはわからないが、 その時点ではそう思ったのである。 申し遅れたが、私は死神をやっている。 今回この3人のうちの一人を連れて行くことになっていたのだが、 この話を聞いて、Cを連れて行こうと思う。 満足しきった人生など、退屈なだけだろうと思うから。
by unnyo8739
| 2004-09-14 13:38
| 僕俺私小話
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Comments(2)
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