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「あああああああああああああああああああああああああ」 ゴキブリは思わず叫んでしまった。 人間に気がつき、はっとして逃げようと思い飛んだのはよかったのだが 焦ってしまい、人間へ向かって飛んでしまったのだ。 彼は前に二度ほど人間に追われた記憶がある。 追われ逃れてたどり着いたこの場所で、ついに命を落とすのは あまりに嫌だと彼は感じた。 ゴキブリが飛んでくるが、私は顔色1つ変えなかった。 冷静というより思考が飛んでいた。 目の前に飛んでくる黒い物体。 普段は高速で動くと思っていたその黒い物体は まるでまるで、スローモーションでもかけたかのような ゆっくりとした速度で向かってくる。 身体はまだ反応しない。 まだうまく飛ぶ方向をコントロールできない。 頭で思っている通りに飛べない現実は、さらに彼を焦らせた。 「人間なんかに接触したら、俺だって無事じゃすまないんだ!」 今迄死んでいった仲間達を振り返る。 毒の霧で死んでいったもの、粘着質の床に取り込まれたもの、 そして、物理的な攻撃にて、無残な姿と散ったもの。 彼が今感じているものの正体は、すなわち恐怖そのものであった。 私は恐怖していた、それがどんどんと目の前に迫ってくる。 身体は思うとおりに動かないが、人体は反射と言うものがあるらしい。 意識せずに、私はそれからの攻撃を防御しようとしていた。 一体どのように防御しようとしたのかはわからない。 ただ、身体の危険を回避しようとする本能のみが、私を動かしていた。 そして、それは一瞬の出来事となった。 つづく。
by unnyo8739
| 2004-07-17 14:45
| 僕俺私小話
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