|
多分前の話。 「どうしますー?」 トシが入り口だったものを睨みながら言う。その声に既にやる気は感じられない。 「あー、めんどくさ。もうええわ、ほなかえろかー」 懐をごそごそとあさり、煙草を取り出しながらジョウが答える。 その足は既に街へと向けられている。 「そっすねー、あ、俺にも煙草ください」 袋ごと煙草を放り投げトシに渡す。 「とりあえず思ったんですけど、一応何かやったって形跡だけは残したほうがいいと思うんですよ」 煙草を取り出しながら言うトシ。 「いや、もうええやん、面倒くさい」 「まあまあ、とりあえず火つけたついでに、その火ぃ穴に放り込んだったらええかなあと」 「それお前、放火やん……」 ジョウは顔をしかめた。まるで放火という形にして鬱憤を晴らす変質者と同じような気がしたからだ。 しかし彼の言う事も一理ある。報奨金五十万円を受け取るために、役所にて正式に処理をしてきているのだ。「無理でした」と諦めて帰るのは容易い、役人に嫌な顔をされるだけだ。だが、今後の依頼にも関わってくるために、いい加減な事は出来ない。 相談の結果、ダンジョンに放火したところで、困るのは中にいるゴブリンくらいだろうと言う話に落ち着き、早速実行に移す事にした。 決まるまで延々と時間がかかったが、決まってしまえば行動は早いのが彼らの長所である。その辺に落ちていたゴミやら何やら、とにかく燃えそうなものをダンジョンの中へと放り込んでいく。小一時間ほどたった後、ダンジョン周辺は見事に清掃されていた。 穴の中のゴミが山と積まれているのを確認したトシが、ジョウへと向かい叫ぶ。 「ほなたのんますー」 「おう、やるでー」 ジョウが炎の魔法を唱え始める。松明ほどの炎がゴミの山に投げられた。小さかった炎は、ゴミに引火しどんどんと大きくなっていく。 「よう燃えてますねー」 「ほんまやなー」 「ごほごほ、とりあえず煙いからここ離れましょ」 「あいよー、つかもう帰ろうぜ」 そんな事を言いながら二人がダンジョン入り口(だったもの)から百メートルほど離れたとき。 どこーん。 ダンジョン入り口(だった)場所で大爆発が起きていた。 爆発は一度に留まらず、二度、三度と続いている。その様子を見て、二人は完全に固まってしまった。
by unnyo8739
| 2006-08-18 16:58
| 僕俺私小話
|
Comments(3)
|
ファン申請 |
||