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自分でも驚くほど感情が高ぶるのを感じた。 必死で平静を装う。だけど僅かなきっかけで、いつ爆発してもおかしくない。 胸の奥が熱い。胃の辺りが波打ってる。 思わず飛び出ていきそうな手を、反対の手で必死に抑える。 そのくせ意識は妙に朦朧としている。頭の中が真っ白だ。 自分でも驚くほどの感情が高ぶりに、自分がかき消されてしまいそう。 「もう一緒にはいられない」 自分を失いそうな状態で、そんな言葉がわかるわけがない。 意味など当然分からない。 一瞬考えるけど、次の瞬間には獣のような感情に侵食されてしまう。 何故そうなんだ。何がいけなかったんだ。 出来る限り、失われそうな自分を必死で保ちながら。 震える声を隠しつつ穏やかに問う。 だけど彼女は俯いたままで、それに答えることは無かった。 ライトアップされた夜桜の下。はらはらと舞う花びらがまとわりついて気持ち悪い。 それ以上に、遠く近く聞こえる酔っ払った花見客の蛮声が、さらに僕を苛立たせていた。 あまりに最悪なこの場所で、あまりに最悪すぎる告白を叩きつけられる。 ぐるぐる回る感情は、怒りなのか悲しみなのか。 音の外れた中年の歌声だけが、妙にクリアに耳に残った。 せめて引き際は美しくあろう。そう思っていた。 踏まれても、罵られても、理屈で感情を押さえつけて、受け流そう。 無限と信じたあの時にも、いつか終わりが来るのだ。 分かっている。理解し、それを許容しているつもりだった。 だのに、まるで丸太で胸を貫かれたかのような、この感覚は何なのだ。 呼吸ができない。 言葉が出せない。 涙なんて出るはずも無い。 今僕はどんな顔をしているのだろう。 今僕はどんな顔をすればいいのだろう。 続く。
by unnyo8739
| 2006-04-14 18:20
| 僕俺私小話
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