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昔々、あるところに一人の女の子がいました。 名前を「ツンデレラ」といい、とても綺麗で可愛い女の子だったのですが、 とても手厳しい性格で、誰も側によってこようとしませんでした。 でも唯一、皆から忌み嫌われていた魔法使いの男の子だけが、 「彼女の側にいたいなあ」と考えていたのでした。 それは少し前のこと。魔法使いは普段隠れて生活していたのですが、 ふとした手違いで、街のど真ん中に姿を現してしまい、 街の人たちから、寄って集っていじめられていました。 本当は街の人たちなんて簡単に追い払う事が出来たのですが、 魔法使いは街の皆に魔法を使いたくないと思っていたのです。 皆と仲良くしたいのだけれど、自分は魔法使い。 畏怖の対象であり、異端そのものである魔法使いは、 とても街の人に受け入れてもらえるものではありませんでした。 「ちょっとあんた達やめなさいよ!」 魔法使いは、背中にモノを投げつけられながら、 すごすごとその場を去ろうとしたその瞬間。 とても大きな、はっきりと通る女の子の声が街に響いたのです。 誰もが目を向けました。誰もが耳を疑いました。 忌み嫌われる魔法使いを庇うなんて、いったい何者なのかと。 「無抵抗の人間を、寄って集っていじめるなんて、あんた達どういうつもりなの!?」 女の子は叫びながら、魔法使いの下へつかつかと歩いていきました。 急速にその場の温度が下がっていくのが魔法使いにはわかりました。 それは、恐ろしい存在である魔法使いに、あんなにも無防備に近寄ってくるから? いいえ、それは皆が彼女の姿を見たからなのです。 誰もが彼女を知っているからなのです。 「ツンデレラ……。」 それが彼女の名前でした。 沈黙がその場を支配し、誰もが彼女から目をそむけています。 無限に続くのではないかと思われた、この凍った時間と空間の中。 「でも、そいつは魔法使いじゃないか」 誰かがそう呟きました。 「そうだそうだ」と、静かに声が聞こえてきます。 最初は小さな歪みであったそれは、徐々に大きなひびとなり、 やがて砕けて、中からマグマのような、恐ろしい熱気が溢れてきたのです。 声は怒号へと変わりつつありました。 ツンデレラは魔法使いを庇うように彼の目の前に立ち、 皆をキッと睨みつけています。 「やめてくれ、姿を見せた僕が悪いんだ」 魔法使いは叫びました。 「僕が消えれば全て治まる」 ツンデレラにだけ聞えるようにそういうと、身体を引きずるようにして、 その場を去っていきました。辺りには再び静けさが戻ろうとしていました。 ツンデレラは去っていくその背中を、小さく、しかし強く歯噛みして見送っていたのでした。
by unnyo8739
| 2005-10-19 11:29
| 僕俺私小話
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